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神戸記念レクチャー

第11回神戸記念レクチャー「法と社会の発展理論を求めて 法哲学・法社会学・開発法学」および関連セミナーのご報告



 2014年5月末から6月上旬にかけての約2週間、ワシントン大学のブライアン・Z・タマナハ先生をお招きして第11回の神戸記念レクチャーと関連セミナーが各地で催されました。各会場でご参加、お力添えくださった会員の皆様には、あらためて深く御礼申し上げます。
 5月31日法政大学での記念レクチャーは、「歴史からみた法の本性についての洞察 Insights about the Nature of Law from History」の題でとりおこなわれました。この講演は、法実証主義(分析法理学)対自然法論という二項図式に囚われがちな近年の法理論の論争そのものを相対化し、(かつては広く認められていた)第三の法理論の潮流−−モンテスキューに端を発し、歴史法学によって深められ、その後米国リアリズム法学が受け継いだ「社会的法理学 social theory of law」の観点−−の可能性を強調しつつ、それが切り開きうる視野の一例として、先史時代から今日に至るまでの人類史のなかで法が辿ってきた態様と機能の変転を概観しようとするものでした。人類学や歴史学の成果を広く渉猟する野心的な企てでありながら、明快で簡潔なその趣旨と語り口は、今日の主要な法理論が陥りがちな理論的・規範的な視野狭窄に新鮮な反省をうながすものだったように思われます。

 この東京での講演を皮切りに、仙台(東北大学)、東京(青山学院大学)、名古屋(中京大学)、京都(同志社大学)、大阪(関西大学)をはじめとする計8か所でセミナーや講演会が催されました。そのテーマも、法理論のみならず開発法学や米国の法思想史、また日米の法曹養成のあり方など多岐にわたるものでした。タマナハ先生は、どの会場においても、討論者やフロア参加者との応答はもちろんのこと、休憩時間や懇親会での質問と議論にも、つねに時間を惜しむことなく全力で応えてくださいました。その気さくな人柄と真摯な姿勢は、多くの方に感銘を与えたのではないでしょうか。
 今後、本企画の仕上げとして、タマナハ先生の記念講演と各地の講演・セミナーでの討論者コメント、そしてそれらに対するタマナハ先生からの応答論文をあわせ、IVRの機関紙ARSP(Archiv für Rechts- und Sozialphilosophie)の特集号として出版できるよう、準備を進めてゆく所存です。無事出版の折には重ねてよろしくお願い申し上げます。

IVR日本支部長 那須 耕介

第11回神戸記念レクチャー「法と社会の発展理論を求めて 法哲学・法社会学・開発法学」のご案内 (終了しました) 




IVR日本支部は日本法哲学会の協力を得て、1987年に神戸で開催された第13回IVR世界大会を記念し、3年ごとに「神戸記念レクチャー」を開催してまいりました。
第11回である今回は、ワシントン大学ロースクールのブライアン・Z・タマナハ教授をお招きして、全体テーマ「法と社会の発展理論を求めて 法哲学・法社会学・開発法学(In Search of Development Theory of Law and Society - Legal Philosophy, Sociology of Law and 'Law and Development')」のもと、東京での講演会を皮切りに、日本各地で関連セミナーを開催いたします。レクチャー・セミナーとも参加無料で、事前のお申し込みは必要ありません。皆様のご参加をお待ち申し上げております。

神戸記念レクチャー・関連セミナーフライヤー(クリックすると拡大表示されます) 
 ダウンロードはこちら➡LinkIcon神戸記念レクチャーLinkIcon東京セミナー



●講演者 ブライアン・Z・タマナハ教授 Professor Brian Z. Tamanaha 
ワシントン大学法科大学院 ウィリアム・ガーディナー・ハモンド法学教授
William Gardiner Hammond Professor of Law, Washington University School of Law, St. Louis
タマナハ教授は、ハワイでの公選弁護人、ミクロネシア連邦ヤップ州の司法長官補、ミクロネシア連邦の憲法改正議会における法律顧問等の実務経験を経て研究者の道を志し、近代的な国家法体系に視野を限定されない法のとらえ方を追求する一方で、近代法の統制理念としての「法の支配」原理の今日的意義、あるいは米国法思想・法実務の流れの中でその危機についての検討を進めてこられました。また近年は、米国における法律家養成システムの破綻を実証的に跡づけた著作を発表して、広い注目を集めておられます。
タマナハ教授の主要な著書は下記の通りです。
Realistic Socio-Legal Theory: Pragmatism and A Social Theory of Law (Oxford U.P., 1999)
A General Jurisprudence of Law and Society (Oxford U.P., 2001)
On the Rule of Law: History, Politics, Theory (Cambridge U.P., 2004)[四本健二監訳『「法の支配」をめぐって 歴史・政治・理論』(現代人文社、2011年)]
Law as a Means to an End: Threat to the Rule of Law (Cambridge U.P., 2006)
Beyond the Formalist-Realist Divide: The Role of Politics in Judging (Princeton U.P., 2010)
Failing Law Schools (Chicago U.P., 2012)[樋口和雄・大河原眞美訳『アメリカ・ロースクールの凋落』(花伝社、2013年)]

■神戸記念レクチャー Kobe Memorial Lecture

主催:IVR日本支部 共催:日本法哲学会、法政大学ボアソナード記念現代法研究所
5月31日(土)14:00~17:30 法政大学ボアソナード・タワー スカイホール (26F)
http://www.hosei.ac.jp/campus/ichigaya/index.html
講演:ブライアン・タマナハ「法の歴史からみた法の本性についての洞察」
(Brian Tamanaha, “Insights about the Nature of Law from the History of Law”)
コメント:嶋津格(元千葉大学)、中山竜一(大阪大学)、長谷川貴陽史(首都大学東京)
問い合わせ:瀧川裕英 tkkw☆rikkyo.ac.jp

■仙台セミナー

主催:IVR日本支部 共催:日本法哲学会
6月2日(月)15:00~18:00 東北大学
『目的のための手段としての法』とその背景
“Law as a Means to an End” and Its Background
コメント:樺島博志(東北大学)、芹澤英明(東北大学)
問い合わせ:樺島博志 kabashima☆law.tohoku.ac.jp

■東京セミナー

主催:IVR日本支部・臨床法学教育研究会
6月3日(火)18:00~20:15 青山学院大学 青山キャンパス17号館9階905教室 
http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html
法曹養成と法理論:日米の法科大学院の諸問題と法理論の規範性
Normative Implications of Legal Theory on Legal Education: An Analysis of Issues Facing the Law Schools of the US and Japan
プログラム:
司会挨拶  後藤昭(青山学院大学法科大学院教授・臨床法学教育学会理事長)
第Ⅰ部
 タマナハ教授のLaw School批判  後藤昭
 とくに言っておきたい点 ブライアン・タマナハ
 日本の法科大学院制度にとっての意義 宮川成雄(早稲田大学法科大学院教授)
 ディスカッション
第Ⅱ部
 タマナハ教授の法理論  森際康友(名古屋大学法科大学院教授)
 私のLaw School批判と法理論との関係  ブライアン・タマナハ
 対談:実践的課題への法理論の規範的効果・影響  ブライアン・タマナハ、森際康友
 ディスカッション
問い合わせ:森際康友 morigiwa☆nomolog.nagoya-u.ac.jp

■名古屋セミナー

主催:IVR日本支部 共催:日本法哲学会
6月5日(木)14:00~18:00 中京大学 法学部 第一会議室
http://www.chukyo-u.ac.jp/information/facility/g1.html
法による発展と法の発展:開発法学をめぐって
Development by the Law and Development of the Law: Debate over the 'Law and Development’ Studies
コメント:松尾弘(慶應義塾大学)、佐藤直史(弁護士、JICAシニアアドバイザー・国際協力専門員)、大屋雄裕(名古屋大学)
問い合わせ:土井崇弘 t-doi☆mecl.chukyo-u.ac.jp

■ 京都セミナー

主催:IVR日本支部 共催:日本法哲学会
6月7日(土)14:00~18:00 同志社大学 神学館礼拝堂
https://www.doshisha.ac.jp/information/campus/imadegawa/imadegawa.html
法理論へのもう一つの視角:タマナハ教授の「社会的法理論」をめぐって
Another Perspective of Legal Theory: Discussion over Prof. Tamanaha’s 'Social Legal Theory'
コメント:那須耕介(京都大学)、長谷川晃(北海道大学)、椎名智彦(青森中央学院大学)、近藤圭介(京都大学)
問い合わせ:宇佐美誠 usami.makoto.2r☆kyoto-u.ac.jp

■大阪セミナー

主催:関西大学法学研究所  後援:VR日本支部、日本法哲学会
6月10日(火)14:30~17:30 関西大学児島惟謙館第1会議室 (1F)
http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/mapsenri.html
「社会的法理論」と法人類学との対話
Dialogue between ‘Social Legal Theory' and Legal Anthropology
コメント:石田慎一郎(首都大学東京)、森正美(京都文教大学)、ジョージ・ムスラキス(オークランド大学)
問い合わせ:角田猛之 ttsunoda☆gold.ocn.ne.jp


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第10回神戸記念レクチャー「人権とグローバルな正義」のご報告

 去る2011年7月、IVR(法哲学・社会哲学国際学会連合)日本支部は日本法哲学会との共催で、第10回神戸記念レクチャー「人権とグローバルな正義」を、オックスフォード大学のデイヴィッド・ミラー教授をお招きして開催しました。
 今回の神戸記念レクチャーでは、7月2日(土)の東京セミナーを皮切りに、7月12日(火)の九州セミナーに至るまで、2週間の間に計5回のレクチャー、セミナーを開催するというハード・スケジュールではありましたが、ミラー教授は疲れを見せることもなく、毎回元気に講師をお務めになりました。
 「グローバルな正義とナショナリティ──David Miller, National Responsibility and Global Justice をめぐるシンポジウム」と銘打たれた7月2日の東京セミナーでは、井上達夫会員(東京大学)、長谷川晃会員(北海道大学)、石山文彦会員(中央大学)、神島裕子氏(中央大学)をコメンテータに迎え、ミラー教授の近著『国際正義とは何か──グローバル化とネーションとしての責任』(風行社)を題材にしたシンポジウムが開かれました[写真]。このシンポでは、長谷川会員が、ミラー教授の唱える「ネーションの責任」と「グローバルな正義」との連接の可能性を主張する一方、井上会員はこれら2つの要素間の緊張がミラー教授の中で解消されていないと批判しました。また石山会員は、ミラー教授がネーションの特別な責任主体性を強調しすぎていると批判し、神島氏はミラーの基本的ニーズ概念を「ケイパビリティ」に引き寄せて理解し、人権のリストを拡張することを提案しました。




 7月4日(月)に中京大学で「グローバルな正義・グローバル資本主義・市場社会主義」というタイトルで開かれた名古屋セミナーでは、ミラー教授の業績に関して、伊藤恭彦氏(名古屋市立大学)、山中優会員(皇学館大学)、浦山聖子氏(日本学術振興会)からそれぞれ報告がなされ、それにミラー教授が応答するという形式がとられました。伊藤氏がグローバルな正義とはグローバル市場の制度改革のための規範であると主張し、浦山氏が、国際秩序の制度改革の必要性を充分に論じていないとミラー教授を批判したのに対し、山中会員は社会正義のために想像上の「ナショナルな連帯心」を擁護することの正当性を改めて問いただしました。
 7月6日(水)には、大阪セミナー「非西洋諸国におけるリベラル・ナショナリズム」が、関西大学で開催されました。このセミナーでは、孝忠延夫氏(関西大学)がインド憲法研究の立場から、堀拔功二氏(日本エネルギー経済研究所)がUAE研究の立場から非西洋諸国におけるリベラル・ナショナリズムの可能性を論じたのに対し、施光恒会員(九州大学)は、日本における人権教育が個人主義的アプローチに則るのではなく人間的成長や共感を重視している点を指摘しました。
 7月9日(土)に同志社大学で開催された神戸記念レクチャーでは、ミラー教授が「人権の享受に条件はあるのか?」という論題で講演を行い、それに対して瀧川裕英会員(大阪市立大学)、富沢克氏(同志社大学)、桜井徹会員(神戸大学)の3人がコメントを発表しました[写真]。瀧川会員は犯罪者が刑罰を受けるに値するのは権利を喪失するからではなく、犯罪者の人権が他者の人権や公共の福祉に劣後するからにすぎないという理由からミラー教授を批判し、富沢氏は政治理論・政治思想の観点からナショナルなレベルにおける権利の喪失の可能性やグローバルな人権保障のあり方について問いただし、桜井会員はミラー教授の人権論を踏まえれば彼自身が「ネーションを跨ぐ社会」の現実性を認めなければならないと指摘しました。


 今回の一連のセミナーの最後を飾ったのは、九州大学で7月12日に開催された九州セミナー「人権・シティズンシップ・ナショナリティ」でした。ここでは、ミラー教授が Human Needs and Human Rights という論題で講演を行ったあと、わが国の新進気鋭の研究者たちがミラー教授の業績に関わるペーパーを発表しました。川瀬貴之氏(千葉大学)はリベラル・ナショナリズムに対するミラー教授の態度を問い、遠藤知子氏(関西学院大学)は国家行為の集団責任を個人に賦課する根拠となるのはネーションの構成員であることでなく民主的政治制度のシティズンであることだと主張し、白川俊介氏(日本学術振興会)は、ネーションを越えたシティズンシップの実現可能性を批判的に検討しました。
 今回の一連の行事においては、東京セミナーが約100名、京都のレクチャーが約80名の聴衆を集めたほか、週日に開催された各地のセミナーも20名~30名の参加者を得て、それぞれ活発な質疑応答が展開されました。
 今回の神戸記念レクチャーの特色の1つは、多くの若手研究者が各地のセミナーでパネリストを務め、コメントやペーパーを発表したことです。その結果、ミラー教授や多くの聴衆に、学界の最先端の議論を展開できる若い研究者がわが国にも着実に育っているという強い印象を与えました。ミラー教授も離日にあたって、「日本の研究者たちは高いレベルで、英語圏における業績とますます関心を共有しつつあり、英語による出版の割合が今後急速に増加することが期待できる」と述べておられました。今回の神戸記念レクチャーの成功をきっかけとして、今後いっそう、わが国の研究・議論もネーションの枠を越えて発展していくことを願ってやみません。
 最後に、今回の一連のレクチャー、セミナーにご登壇いただきましたパネリストの皆様、各会場での開催に全面的に協力してくださった神戸記念レクチャー実行委員会の皆様、IVR日本支部とともに共催の労をとってくださった日本法哲学会事務局の皆様、そして各地の会場に足を運んでくださった皆様にあらためて厚くお礼を申し上げます。



IVR日本支部長 桜井 徹

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